ありがたみ

うどんは美味い。個人的には出汁の効いた、いわゆる関西風な味が好きなのだが、それだけではなんだか心もとない。そんな時にご登場頂きたいのが、やはり「七味唐辛子」である。辛いものにあまり強くないこともあり、家でも滅多にご登場頂かないこの「七味唐辛子」だが、ひとたびうどんに投入すると、なんとまあ、これまでのうどんが“つぼみ”だとしたら、それが一気に花開くのである。ところが先日家でうどんを調理し、いざ食そうとしたときにキッチンのどこを探しても「七味唐辛子」がないのだ。たしかに買った記憶もキッチンで見た記憶もあるのだが、どこにもない。意地になって必死で探した。戸棚も流しの下の扉も、まさかとは思いつつも冷蔵庫も。向かいのホームだって路地裏の窓だって、こんなとこにあるはずもないのに探したのだ。普段はあまり重要視していない「七味唐辛子」も、いざこうなるとありがたみに気付くのである。

 

「ありがたみ」と言えばブランドの復活からずっとビジュアルのディレクションを担当させて頂いている『EYEVAN 7285』にはありがたみを感じざるを得ない。数あるプレスルームからmurofficeを選んで頂き、そして、ビジュアルの制作まで委ねて頂けるとは涙ものである。つい先日制作したビジュアルも、僕の突飛よしもないビジュアル案にご賛同頂いた際には、本当に涙が出そうになった。その時に制作したのが写真のものである。

 

EYEVAN 7285』は1972年に『山本光学』と『ヴァンヂャケット』の業務提供により誕生し、“着るメガネ”というコピーと共にその当時の20代〜30代の男性を中心に一世を風靡した伝説的なアイウェアブランド。かの『ヴァン ヂャケット』との業務提携により生まれたブランドだけに、もちろんコンセプトには“アイビー”がある。“アイビー”といえばアメリカの名門私立8大学からなる“アイビーリーグ”。“アイビーリーグ”といえば様々な種目はあれど、やはり“アメリカン・フットボール”。ということで、アメフトの世界観のビジュアルを提案するに至ったのだ。ここでこだわったのは画角を引かないこと。あくまでアイウェアブランドのビジュアルらしくバストアップの画角の中でアメフトの世界観を表現したかったのである。

 

撮影はアメリカ・ロサンゼルス(“アイビーリーグ”はアメリ東海岸の8大学からなる連盟であるが、ここはご愛嬌)。実際に大学生のアメフトの試合に行ってその場で交渉し、選手をはじめ、コーチ、レフェリー、チアガール、ブラスバンドの学生などに試合前後、そして試合の最中にも『EYEVAN 7285』のアイウェアを着用してもらい撮影してきたものである。撮影中、もちろんいろいろなハプニングには見舞われたが、無事プレゼンの際にお見せしたコンテどおりの、否それ以上の写真を撮ることができた。今見ても、よくこんな本当に撮れるか撮れないか分からないようなビジュアル案にOKを出してくれたものだと『EYEVAN 7285』さんには感服せずにはいられないのとともに、本当にありがたみを感じる…。

 

 

 

 

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[EYEVAN 7285   2013-14 Season Visual]

 

Photograph: Shunya Arai [FEMME]

Styling: Hidero Nakagane [S-14] 

Creative Direction: Taisuke Nakamuro [muroffice]

 

Special Thanks: Megumi Yamano

 

 

 

 

 

muroffice ディレクター

中室 太輔